幼稚園では「かな漢字交じり」の読本を毎日声を出して素読しています。
この素読の効果について、月刊誌『致知』(2016年12月号)に掲載されている川島隆太先生(東北大学加齢医学研究所所長、専門は脳機能イメージン学)と齊藤孝先生(明治大学文学部教授、『声に出して読みたい日本語』著者)の対談の中で語られていました。 この記事を通して多くの気付きを与えられましたので、記事の内容の一部を紹介しながら、素読の効果について紹介したいと思います。
ゲームよりも読み書き計算?
川島先生は「ゲームを楽しんでいる時の脳はよく働き、嫌々勉強する時の脳は働かない」という仮説を立てて実験をしたのですが、結果は予想とは反対でした。
集団での素読でクラスの一体感が増す
幼稚園で行っている「ヨコミネ式学習」は必ずしもすべての子どもが意欲的に取り組んでいるわけではなく、子どもによっては嫌々ながらやっています。
もちろん、同じ課題でも、興味を持って取り組む方が脳活動は活発になりますが、嫌々ながら文章を読んだり、単純計算をしていても脳は働いています。なぜそうなのか、いまだに解明されていませんが、人間の脳の発達の過程で、数や文字を使うようになったのは、種族の生き残りという点で革命的なことだったので、計算や文字を読む刺激によって脳を発達させる何らかの遺伝子が発現していると考えられます。
本は黙読するより、声を出して素読するほうが明らかに脳の機能が働いていることがデータ的に裏付けられています。
黙読は文字を捉えて視覚で覚え、そこに書かれている意味を理解します。一方、それを声に出すのは、理解した文章の情報を音に変換する、口を動かす、息を出す、自分の声を耳で聞くといった二重、三重の機能が働くことになるので、それだけ脳活動は活発になります。
幼稚園で素読をするとき、先生のリズミカルな先導に合わせて子ども達が復唱していますが、先生のリズムが体を通して子ども達に伝わり、意味を呑み込めるようになるという教育効果があります。心が通じ合えば、それまで一人ひとりバラバラだった脳の活動が一つになってきて、クラスに一体感が生れます。
素読はコミュニケーション能力を高める
子ども達は難しい言葉の意味が分からなくても、面白がって次々に覚えてゆきます。あえてこちらが説明しなくても、言葉の奥行きに自然と興味を持ちます。
幼稚園では俳句や詩、論語の暗誦をしていますが、子ども達はゲーム感覚で抵抗なく覚えようとします。
素読を模倣という切り口で見ていくと、いろいろな世界がわかってきます。赤ちゃんが親の話を真似て言葉を覚えていくように、模倣は人と人とのコミュニケーションの第一歩です。また素読は子ども達同士の連帯感を高め、コミュニケーション能力を育てます。
素読を速くやれば効果は大きくなる
素読を速くやれば頭の回転速度が上がります。例えば、早口言葉のようなものを毎日やっていると、脳がつくり替えられるということが見えてきました。頭の回転速度と記憶の容量は、20歳を過ぎると遅くなり、小さくなりますが、素読を速くやることで脳機能の低下を食い止めるし、子ども達の場合は発達期の脳の器が大きくなります。
そのことを意識しながら一日に10分から15五分の素読を行うと記憶力がよくなるばかりでなく、別の力まで伸びるという反応が起こります。その別の力とは、抑制力、創造力、論理的な思考などです。
タイムを計って計算させる「百マス計算」も同じ理論です。急がせるところに意味があります。脳のトレーニングは早くないと意味がありません。「勝山学童塾」では「百マス計算」を頻繁に行っていますが、塾生はゲーム感覚で、楽しそうに速さと正確さを競っています。
SNSで記憶が消える
子ども達同士がお喋りしたり、フェイスブック、ラインに代表されるSNSをやったりするのは、素読とは逆の効果です。効果どころか、SNSをやっていると脳に抑制がかかることが分かってきました。見た目には手を動かしたり、頭を使っているように思えても、脳は眠った状態になっています。
ラインの文面は「お昼何にする?」「カレー」「どこに行く?」といった幼稚園レベルの会話しか続きません。物を考える人としての脳は積極的に寝てしまっています。脳が抑制されています。
川島先生は7年間、仙台市の7万人の子ども達の脳の調査をしましたが、スマホやSNSを使えば使うほど学力が下がることが分りました。睡眠時間や勉強時間に関係なく、スマホを使うことによって、勉強した大切な脳の記憶が消えているという恐ろしい現実です。昨年のオーストラリアに始まって、フランス、スペイン、ノルウェーなど、若者の安全保護を目的として、SNSを規制しようとする動きが始まっていますが、私は「脳を育てる」という観点からも好意的に受け止めています。
人を育てることの難しさ
かつては親が背中を見せることで、子ども達が育っていましたが、時代は変わりました。大人が手取り足取り教えないと、育ってくれない子ども達が多くなりました。家庭でも意識して積極的に、子ども達と一緒に素読や読書をする時間を作るようにしてみてはいかがでしょうか。
<文責> 勝山幼稚園 チャプレン(武井 義定)


