勝山幼稚園に「ヨコミネ式教育」が導入されてから18年が経とうとしています。毎日の「かけっこ、体操、読み、書き、数字」の短時間の繰り返しは、子どもたちの「 こころ と からだ 」に大きな変化と成長をもたらしてきました。
人間の心を鍛えるようなことは簡単にできることではありませんが、子どもたちに自信を持たせることはできます。昨日はできなかったことが、今日はできるようになって先生からほめられた、この間まで読めなかったひらがなが読めるようになった、絵本を一冊読んだ、跳び箱5段を跳べたetc.
子どもたちが以前にはできなかったことができるようになったという新しい力を獲得することによって、子どもたち一人ひとりの「あり様」や「人間性」というものが、いい意味で変化・成長するということを知らされてきました。
子どもたちにとっては、毎日の活動として繰り返す「かけっこ、体操、読み、書き、数字」は、「無理矢理にやらされる活動」ではなく、毎日当たり前の日課のように繰り返すために、「遊びとしての学びの活動」になり、それらの活動を通して「心」が育てられているように思います。
年少組になってから子ども達は本格的に「かけっこ、体操、読み、書き、数字」を毎日繰り返す「ヨコミネ式保育」に取り組み始めます。日が経つごとに、明らかな子どもたちの変化・成長が見られます。
頭を床から離してブリッジができるようになった、ブリッジの手踏み、足踏みができるようになった、ブリッジ歩きができるようになった、逆立ち横移動ができるようになった、壁逆立ちができるようになった・・・
と、以前にはできなかったことが、できるようになり、そのことを家族や友達や先生からほめられて嬉しくなり、もっともっと、練習したくなり、「やる気」が出てきます。「身体性をともなった達成感」を味わうことは、子ども達に大きな「自信」と「喜び」を与えると同時に、子ども達の表情も生き生きとしています。
学力には「見える学力」と「見えない学力」の二つがあります。
「見える学力」とは3+5=8や、7-5=2といった計算ができるとか、山・川・池といった漢字を正しく読めて書けるといった、テストで採点・計測できる力のことです。
「見えない学力」とは、こうした「見える学力」を根っこで支える力のことです。
しっかりとした土台があってこそ丈夫な建物が建つのであり、豊かな土壌があってこそ植物がスクスクと育ち実をつけるように、「見えない学力」なくして「見える学力」を築き上げることはできません。幼児期に「見えない学力」を養うことができたこどもこそが、小学校に入ってから「見える学力」をスクスクと伸ばすことができます。
ちなみに、「見えない学力」は三つから構成されます。
<1つ目> 「言語能力」です。確かな言語能力なくしては、新たな知識や概念を獲得することはできません。学力獲得の前提条件とも言える、書き言葉を読み書きする力を伸ばすために、幼児期から文字・言葉に親しむことが大切です。
<2つ目> 「根気・集中力」です。物事にコツコツと取り組み、途中で放り出さないで、分からないことやできないことを、分かるまで、できるまで集中してやり通す力は、主に幼児期から味わう達成感の繰り返しの体験によって形成されます。
<3つ目> 「体験」です。遊びをはじめとするさまざまな体験を豊かに持つこどもは小学校に入って新しいことを習っても、自らの体験をもとに容易に理解し、それを応用していくことができます。これは幼児期に家庭や幼稚園で、周囲の大人たちが子ども達とどのように接してきたかに大きく影響されます。
この三つの要素から成る「見えない学力」を幼児期にしっかりと身につけた子どもは、小学校に入っても、自ら進んで机に向かい、本を手に取り、コツコツと物事に取り組む子どもになります。そして「自学自習の力」を備えた子どもとして育ちます。さらには、勉強ができるだけではなく、友だちや兄弟姉妹との輪の中で、人間的なたくましさ、優しさを身につけていきます。やがて社会に出たとき、自分自身はもちろん、周囲の人をも幸福にすることのできる人間として育っていきます。
「ヨコミネ式教育」を通して、子どもたちの「見えない学力」を養っています。家庭と幼稚園で連携しながら、簡単には折れない、諦めない、挫折しない子どもに育ってほしいと願っています。
勝山幼稚園 チャプレン 武井 義定

