子育てを論ずることは難しいことです。
「このように子どもと関われば、子どもはこのように成長する」というような定式化されたマニュアルというものはありません。
私は3人の息子達の子育てに関わってきましたが、息子達と日常的に関わっているとき、どんな場面で、具体的にどのような言葉かけや、関りをしていたのか、定かな記憶はありません。
息子達が絡んで、毎日起こる大小の出来事に対処することに必死でした。
「あんなことを子どもに言ったけれど、よかったろうか」
「あんな関わり方を子どもにしたけれど、よかったろうか」
と反省する暇も時間もありませんでした。
その時、その時に、できる限りの精一杯の関わりをしたつもりです。一つひとつの子ども達への関りが、子ども達の思春期にどんな結果がでるのか、そんなことを気にしたこともありません。
臨床心理士として、そして園長として35年間多くの子ども達と関わってきて確かに言えることがあります。
子ども達が10歳を過ぎて、一筋縄ではいかない行かない問題を抱えて親を巻き込んだり、子ども達に無気力がすっかり身についてしまったとき、そんな子供たちを、なんとか親の思い通りにしようと思っても、決して簡単ではないということです。手遅れまでとは言いませんが、親が途方もないエネルギーと努力を強いられることは確かです。
「鉄は熱いうちに打て」とは古くから言われていることですが、
「人間は、心が純粋で柔軟性がある若いうちにこそ、しっかり教育や鍛錬をするべきだ。」
と教えています。確かに言えることは、子どもを「しつける」大事な時期は、「幼稚園」の時期です。
ここで言う「しつけ」とは、挨拶とか礼儀作法だけではなく、子どもがどういう姿勢で人生を生きていくのか、そして他者と関わりながら人生に喜びを持って生きていくための心の基礎を作ることが「しつけ」です。
子ども達に身に着けてほしいと願っている「しつけ」は、子ども達が、ただ与えられるものをだけを待っているのではなく、
「それは面白そう、やってみたい、やってみよう!」と自発的に物事に立ち向かっていく「積極的な心構え」です。
それでは「積極的な心構え」を育てるには、どうしたらいいでしょうか。
「ある出来事」に対してとった「特定の行動」が「満足のいく結果」を生んだら、それを繰り返すことによって「習慣」が出来上がります。
子どもが新しい課題、たとえば「壁逆立ち」にチャレンジしたとします。
うまくできたら、まず自分が満足します。そのできたことを周囲の大人が見逃さず、まずは認めて、ほめてあげる。
これによって子どもは「今度は壁逆立ち手踏みの10回に挑戦してみよう!」と、次の新しい課題に取り組む心構えを作り始めます。
大切なのは、子どもがうまくいかなかった場合の周囲の関わり方です。
「なんでこんなことできないの!」と叱るのではなく、できたところまでの成果を十分に認めて、ほめてあげることが大切です。
さらに大切なのは、他者とよい関係を作っていくために必要な「共感の力」と 「思いやりの心」を養うことです。この二つは人間が、幸福な人間として生涯を送るためにどうしても必要な「生きる力」です。
「ハングリー精神」という言葉がありますが、「生きる力」はある程度、ハングリーな状況の中から生まれてきます。
子どもが5人もいる家庭では、おやつ一つでも、ボーッと待っていたのでは手に入りません。先を争って手に入れなくてはなりません。
戦後のものが少なかった「貧しさ」は、私の自発性を大いに養ってくれました。食べたいもの、欲しいものは主張しなければなかなか手に入りませんでした。
取り合いのケンカも一杯しました。
しかし同時に、他者と力を合わせて生きていく楽しみも、そこにありました。自分一人で孤立していては、何一つできないということを学ぶ「場」がありました。
子どもにとって、幼稚園は、家族以外の人たちと時間を過ごす初めての「場」です。
この「場」での様々な体験や経験と通して、世の中は自分を中心に回っているのではないことを知ります。世の中には辛いこともあり、我慢しなければならないことが沢山あることを知らされると同時に、家族以外の同じような年齢の仲間と時間をともに過ごす楽しさも味わいます。
勝山幼稚園という「場」でいろいろな体験をして、「できた!」という達成感を積み重ねながら「積極的な心構え」を養ってもらいたいと思います。
そして保護者の皆さんも「子育て」を通して、多くの学びをしてください。親になる資格ができたから子どもが与えられたのではありません。子どもが与えられて、子どもとの関わりを通して、親として育てられます。
文責 チャプレン(武井 義定)

